ソーラークッカーを使用する際の安全性確保について | |
ソーラークッカーは決して危険な道具ではありませんが、使い方や保管の仕方によっては、思いがけないケガや事故の原因となりえます。 想定できるケガや事故について、報告されたものも含め、使用する場面ごとに紹介したいと思います。 |
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1.準備段階での事故 焦点をもたないような設計をしている場合でも、光が高密度で集まっていれば、やはり同様の注意が必要になります。それは、焦点あるいはそれに順ずる点に不用意に可燃物を置いたり、体の一部を出したりしないということです。 調理を始める際、光が本当に集まっているかどうかを確認するのに、直接手のひらを焦点付近にかざす人がいます。自分のソーラークッカーの特徴をよく分かっている熟練者の場合はそれも結構ですが、子どもの前で実演する時には好ましいとは言えません。焦点にどれくらい光が集まっているかは、そこに「もの」をもってくるまでは分からないのです。焦点の位置がどの辺か、また組み立て、セッティングがうまく出来ているかを確認するため、焦点付近にどうしても何かを置かなければならない場合があります。紙などを使う方もいますが、燃えた紙が風で飛ばされたりしたら大変です。そのような時はなるべく柄の長いフライパンのようなものを使うといいでしょう。それでも長い間空焼きを続けると金属であっても焦げたり、ひどい時には穴があいてしまったりします。手袋をしていても、手で焦点位置を確かめたりしないで下さい。また、セッティングをする際は周りにいる人の目に反射光が入ったりしないように気を付けて下さい。 1−b.運送中の事故 |
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2.使用中の事故 2−a.鍋に直接触れる事によるやけど ソーラークッカーは黒あるいはそれに近い暗い色で塗られた鍋(調理部)に光をあて、吸収された光が分子の熱振動を起こし、摩擦熱により鍋(あるいは調理部)自体を発熱させ調理を行います。したがって、火のように見慣れた熱源がない(見えない)為、鍋が熱くなっているという心構えがなかなか出来ません。それから、比較的ゆっくりと加熱され、沸騰自体も静かな未飽和沸騰(発生した気泡が壁面を離れるとすぐ冷却されて液化、消滅する沸騰)の状態になっていることが多いため、不用意に鍋に手を出してしまうのです。思い込みとは恐ろしいもので、鍋を触ってからしばらく経っても熱いことに気が付かない事もあります。それが、中身のたくさん入った重たい鍋を持ち上げた場合だとしたらどうでしょう。「あちっ!」と手を離した後には更に大きな惨事が待っているかもしれません。調理中、あるいは調理の終わったソーラークッカーを扱う際には必ず軍手のような厚手の手袋を着けている必要があります。 2−b.鍋のフタ、あるいは熱箱のフタを開ける際のやけど
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3.保管時の事故
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【その1】 凹面鏡が焦点距離の短いパラボラである。 このようなパラボラは、通常焦点距離の長いパラボラ(図1)より安全であると言われています。つまり、焦点を離れた光はすぐに大きく散逸しますし(図2)、焦点の位置が本能的に分かりやすいからです。 |
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【その2】 軸に対し大きな角度で光が入射している。 焦点距離が長いパラボラの場合は、入射光がかなり傾いていても焦点のようにかなり集光する領域があるのですが(図3)、焦点距離の短いパラボラでは光は一見、散逸するだけのように見えます(図4)。 |
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【その3】 集光している領域は、パラボラからかなり離れている位置にも存在する。 これは、【その1】とも関連しますが、通常は焦点距離の何倍も離れている位置に危険が潜んでいるとは予想できません。 |
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なぜ、このような事が起きたのでしょうか? 図5、6、及び7をご覧下さい。図6は、深いパラボラにかなり浅い角度で光が当たった場合(図5)のスクリーン上の光のパターンを描いています。 図7は、実際に実験したスクリーンでの像です。光がV字型の線上に集中しているのが分かります。このような像はスクリーンの位置をパラボラからかなり離しても現れます。つまり、焦点ではなく、焦面が存在しているということです。 光の密度は当然焦点よりずっと落ちますが、この領域内に入った物体には線状の焦線とも言えるものが現れることになり、その物体の熱容量が小さければ簡単にその部分の温度を上げていく事が可能です。 この焦面というあいまいさは、焦点より危険であるとさえ言えるでしょう。ソーラークッカー、特に反射集光型の場合には、それを保管する際にも、「反射面には光が当たらないようにする」、「周囲には可燃物を置かない」などの注意が必要です。 |
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